こゝろ
「まあ、そういうところは確かにあるかも。」
撫子はなぜか滝さんに共感しました。
「やっぱそう思うよね! ねえ、優心はどう?」
そして、それは滝さんのテンションを上げさせました。誰にも言えないことを誰かに共感してもらえると嬉しいのは、人間として当然の反応だと思います。
その共感してくれる人を増やそうと、滝さんは私にもそう訊いたんだと思います。ただ、私がそう答えてしまうと、佐久間さんに何だか悪いような気がしました。でも、ここで私一人が否定をしてしまうと、滝さんは私のことを軽蔑するに違いありません。滝さんは自分の味方には優しい、そういう人だからです。
「まあ、どちらかと言えば……。」
当然、こう答えるしかありません。
「やっぱり? じゃあさー、みんなで里香のこと無視しない?」
そして、こういう流れになることも何となく予感していました。どんなに嫌いな相手でも、無視は酷いことだと思います。無視はいじめに繋がります。私は確かに佐久間さんのことは嫌いですが、いくら何でも無視は行き過ぎだと思います。
「うん。いいんじゃない?」
にもかかわらず、撫子はなぜか滝さんの提案に乗ります。しかし、目線はスマホに向けられたままです。
「というわけだから、優心も里香が話しかけてきても無視だからね? いい?」
「……。」
私は上手く返事ができませんでした。そんなこと、とてもできません。でも、「できない。」なんてことは言えません。なんて答えたらいいのか……私は救いの手を差し伸べるように撫子の方を向きました。撫子は私を一瞥して、それからスマホ画面に視線を戻しました。
私が答えに困っていると、急に滝さんがズイッと私に顔を近づけました。