こゝろ
「いい? 佐久間や滝の前では私との会話は敬語ね。いろいろ言われるのめんどくさいだろうし。」
「うん! そうする。」
「でも、勘違いしないでね?」
急に撫子の声が小さくなって、もじもじとしていました。
「勘違い? 何を?」
「私は優心のこと、親友……いや、親友以上だって思ってるから。」
それを言うと、撫子はさっきの笑顔で私に手を振り、再び教室の方を向き直りました。その撫子の背中に向かって、私は比較的大きな声で叫びました。
「私も、撫子のこと、親友以上だって思ってるから!」
撫子はまた振り返って、「今の言葉、約束だからね?」と笑って、小走りで教室に走って行きました。
それとすれ違うようにして滝さんがトイレから帰って来ました。