こゝろ
「あれ? 撫子は?」
「もう教室に戻りましたけど……。」
「あっそ。ならちょうどいいわ。」
そう言って、滝さんは私の両肩を掴みました。
「ねえ、優心。優心は、私の味方だよね?」
「え?」私は一瞬、滝さんの言葉の意味を考えましたが、笑顔で、
「もちろんですよ! 私は滝さんの味方です!」
そう答えました。その答えを聞いて、滝さんはまたうんうんと頷いて、それから言いました。
「今日、撫子の家に泊まるんでしょ?」
「ど、どうしてそれを?」
私は動揺して、それからまた「しまった!」と思いました。「どうしてそれを?」なんて言葉は、認めていることと同じだということに、言ってから気づいたからでした。
「まあ、傍で聞いてたから……。そんなことはどうでもいいの。優心、あんた撫子の好きな人、訊き出してくれない?」