こゝろ





「あれ? 撫子は?」



「もう教室に戻りましたけど……。」



「あっそ。ならちょうどいいわ。」



そう言って、滝さんは私の両肩を掴みました。



「ねえ、優心。優心は、私の味方だよね?」



「え?」私は一瞬、滝さんの言葉の意味を考えましたが、笑顔で、



「もちろんですよ! 私は滝さんの味方です!」



そう答えました。その答えを聞いて、滝さんはまたうんうんと頷いて、それから言いました。



「今日、撫子の家に泊まるんでしょ?」



「ど、どうしてそれを?」



私は動揺して、それからまた「しまった!」と思いました。「どうしてそれを?」なんて言葉は、認めていることと同じだということに、言ってから気づいたからでした。



「まあ、傍で聞いてたから……。そんなことはどうでもいいの。優心、あんた撫子の好きな人、訊き出してくれない?」




< 63 / 150 >

この作品をシェア

pagetop