こゝろ
撫子は自転車で来ていました。私服のワンピースにサンダルといったラフな格好。そういえば、撫子の私服を見るのは初めてでした。
私があまりにも見惚れているものだから、撫子が自転車に鍵を差し込んで、「んー?」と振り返りました。正面で見ると、撫子は本当に可愛らしかったです。
「どう? 似合う?」
そう撫子に訊かれて、私は正直に、「すっごく似合ってる!」と答えました。
「そう? よかったー、褒めてもらえて。」
撫子は嬉しそうにハニカミ、私のリュックサックを自転車の前かごに乗せてくれました。
「優心、乗る?」
撫子は自転車に跨って、私の方を振り向き、「乗ってけよ!」と言わんばかりに荷台をポンポンと叩きました。
「でも、二人乗りは禁止されてるし……。」
「優心って真面目だもんねー。でも、いいじゃん? 警察が来たらサッと降りるで。ね? そっちの方が早いし。」
確かに私の歩く速度に合わせて、撫子に自転車を押させるのは気の毒でした。仕方なく、私は撫子の自転車の荷台に乗って、撫子のお腹に手を回しました。