こゝろ
撫子は前々から言っていました。「私の家、超金持ちだから!」と。
撫子の言ったことは本当で、私の家とは比べ物にならないくらい大きくて、おしゃれで、立派なお家でした。
「さあ、上がって、上がって!」
白いゲートをくぐって、それから広い玄関に案内され、すぐ目の前にある白いグニャグニャと曲がった手すりのついた階段を上りました。
その奥に「NADEKO’s ROOM」と書かれたプレートが掛けられた扉があり、そこを開けると、ピンク一色の部屋が現れました。
「すごい……。」
撫子のことについては、ある程度知っているつもりでしたが、私の想像を遥かに凌ぐほど、撫子は乙女でした。
カーテンもピンク、壁紙もピンク、ソファーもベッドカバーもピローケースもピンク。そのベッドの上には大きなぬいぐるみが、入学式で撮る、クラスの集合写真のようにズラッと、姿勢よく座っています。学習机は、木製でしたが、その上に掛けられているデスクマットはピンク。本棚ももちろんピンクで、並んでいる本の表紙もピンクが目立ちました。
「まあ、座ってよ。」
私はソファーを勧められ、フカフカのソファーの背もたれにはもたれずに、腰かけました。改めて部屋の中を見回すと、まるでおとぎ話に出てくるお姫様の部屋のようでした。