こゝろ
「気に入った?」
撫子が紅茶とマフィンを乗せたお盆を運んできて、ガラステーブルの上に置きました。
「気に入ったというか……意外というか……。」
「意外?」
「撫子ってもっと黒っぽい部屋に住んでるイメージだった。」
撫子はなぜか対面には座らず、私の隣に腰かけました。
「確かにそうだよね。私、女の子っぽくないし……。」
「そ、そんなことないよ!」私は紅茶の入ったティーカップを持ちながら慌てて言いました。
「撫子は女の子だよ。乙女だよ。私にはちゃんとわかってる。」
「そう?」撫子は紅茶をひと啜りして、カチャンと静かに音を立てて置きました。
「優心がそう言ってくれるだけで、嬉しい。」
撫子は笑顔で「マフィンも食べて!」と勧めてきました。