こゝろ
映画が終わると、紅茶もマフィンもなくなっていて、外もすっかり暗くなっていました。
そろそろ帰らないと……。そう思って、リュックサックを見て、ああ、私は今夜、撫子の家に泊まるんだということに改めて気づかされました。それと同時に、滝さんの命令。任務を遂行しなければいけないことにも気づかされました。
任務内容は、「撫子の好きな人を訊くこと」。タイミングとしては今がチャンスでした。
「ねえ、撫子。」
「何?」
撫子は自分のベッドの上で横になったまま答えました。
「撫子って好きな人、いるの?」
「……どうして訊くの?」
どうして……私は何も言えず、黙りこくってしまいました。すると、その沈黙を破るように撫子が言いました。
「いるよ?」