こゝろ
やっぱり撫子は乙女でした。こんな可愛らしい部屋に住んでいるのですから、好きな人がいても、恋をしていても何も不思議なことはありません。
「へえー、誰?」
私は滝さんの命令なんかよりも、好奇心に近い気持ちで訊きました。
「……言っても引かない?」
撫子はなぜかそんなことを言いました。一瞬、私の頭の中でクエスチョンマークが浮かびましたが、それは一瞬で消えました。
「引かないよ?」
「約束する?」
「約束するよ。」
すると、撫子はベッドから起き上がって、私に近づいて、腕を取り、ベッドの方へ私を誘導しました。
「ど、どうしたの?」
戸惑う私を他所に、撫子は急に私をベッドに仰向けに、押し倒しました。
その上に撫子がのしかかる形になりました。
「ちょ、ちょっと……撫子?」
すると、撫子は私の目をじっと見つめて、静かに、信じ難いことを言いました。