こゝろ
コレクションの一つ





撫子の顔を下から見ることなんて、ないと思っていました。



撫子の髪が自分の頬に触れることなんて、ないと思っていました。



撫子の柔らかそうな口から私のことが好きという言葉が発せられるなんて、ないと思っていました。



ないと思うから、ないのです。



でも、想像しようと思えば、いくらでもできたと思います。想像できるものは、必ず現実になります。



だから、これは私が想像しなかったという怠惰が、寝耳に水、予測不能の事態を招いたのです。



悪いのは、心をさらけ出した撫子ではありません。想像できなかった私が悪いのです。




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