こゝろ
「私は……どうしたらいいの?」
私は涙を流しながら、ベッドの上で打ちひしがれました。すると、撫子が裁ちバサミを持ったまま、私に歩み寄って来ました。
そして、そのまま裁ちバサミを持っていない左腕の制服の袖で、私の涙を拭いました。
「私のものになればいい。そうすれば、島原くんを殺す必要もないでしょ? 簡単なことよ。」
「……撫子のものに?」
私は撫子の言葉の意味を履き違えていました。
「撫子と付き合えばいいの?」
「そうじゃない。私のものになるの。私が右と言えば、右。左と言えば、左。私の思うままに、人形のようにしていればいいの。」
私は確信しました。撫子は、私のことを愛していない。ここに並んでいるぬいぐるみと同じように、コレクションの一つ。その中でも特に大事なコレクションとして思っていなかったのです。
でも、好きな人を失うことに比べたら、こんなものなんでもないと思っていました。もう、冷静な判断ができなくなっていたのです。
だから私は、撫子のものになることを決意しました。
「大丈夫。悪いようにはしないから。」
そう言って笑った撫子ですが、やっぱり笑顔は冷たかったです。