こゝろ





今思えば、撫子は心が病んでいたんだと思います。そして、これがだんだんエスカレートして、いずれは殺されるんじゃないか。そう思っていました。



こういう人を「サイコパス」と呼ぶのだと、私は思います。



「サイコパス」。いい響きに聞こえますが、言葉の響きとは比べ物にならないくらい、恐ろしいものなのです。



撫子は私に生ゴミを食べさせました。食べないと、殴る蹴るの暴行を受けます。だから、食べるしかありません。そして、それを嘔吐してしまうと、撫子はまた例の如く、吐瀉物を舐める。舐めて笑う。



「ほら、美味しい?」



「……お、美味しいです。」



そう答えるしかありませんでした。そう答えないと、殴る蹴るの暴行。



そして、やっと食事が終わると、撫子は「洗い物は私がするね。」と言って、床を雑巾で綺麗に拭きました。



雑巾をバケツに入った水で洗って、撫子は言いました。



「いい? 私が訊いたことにはちゃんと答えること。そうしないと、今日みたいなことになるから。」



私は、床に正座したまま大きく頷きました。




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