こゝろ
それから滝さんは、私が泣き止むのを黙って待ってくれました。
ほんの3分ほどの間だったと思います。私は、泣きに泣いて、泣き疲れて、吐いた空気が震えるほどでした。
「大丈夫。大丈夫……。」
滝さんは私の背中を優しく撫でてくれました。そんな優しさが滝さんにあるなんて、私は全く知りませんでした。感じたこともありませんでした。
滝さんは、あの4人グループの中で一番嫌いな人でした。常に強い人の陰に隠れて、自分の身の安全を確保する。でも、それはそう見えるだけであって、根は優しいんだと思います。
本当に優しい心を持っていないと、誰かの太鼓持ちのようなことはできないと思います。
そういう憎たらしいトゲを持ったサボテンも、根が丈夫じゃなければ、優しくデリケートでなければ、綺麗な花を咲かせることはできないのです。