愛の消息
愛の消息
彼女は生きているのだろうか。
彼女は私に可愛い服など着せてくれなかった。ご飯をくれなかった。笑ってくれなかった。誕生日を祝ってくれなかった。
そんな彼女は今、息をしているのだろうか。


お洒落な街のお洒落な通り。有名なブランドのお店ばかりが並ぶ通り。

「アイ、今日誕生日じゃない?」
「うん。そうなんです。黒田さん、よく覚えてましたね。」
「プレゼント買ってあげる。好きなの選びな。」
「ほんとに?迷っちゃうな」

気を緩ませると今にもこけそうな、11センチのピンヒールを履き、上品かつ洗礼された作りの少し派手目のスーツを着て、茶色い髪をアップでまとめて、不動産業を営む黒田さんの恥にならないようにと真っ直ぐ歩く。


私は今日で22になる。この世に形として、人間として生まれて22年。私の人生はどんなものだろうか。物心ついた時から居場所がなかった。思い出せるのは、片付けられていないシンクに溜まったお皿たち。日中でも真っ暗な部屋。そしてボロボロに破けた服を何日も着ている私。お腹が空いていて泣く元気もなかった私。そんな人生のスタートだった。

< 1 / 6 >

この作品をシェア

pagetop