彼と私の優先順位
「……わかってる。
でも今回のことは柘植が悪いから。
結奈ちゃんが気にしなくていいよ、私からもよく言っておくし。
今日は館本さんと一緒に帰りなよ。
皆には適当に説明しておくから。
……それよりも……後日聞かせてよ?
王子様とのこと」



優しく微笑んでくれる巴ちゃんに私はありがとう、と伝えて小さく頷く。

それから直ぐに、千恵ちゃんが荷物を持ってきてくれた。

テキパキと巴ちゃんが千恵ちゃんに事情を説明してくれる。



大まかな飲食代金を千恵ちゃんに渡して入口近くに移動していると、慧と一人の女性が小走りにやって来た。

「ごめん、結奈、待たせた」



横にいる女性には目もくれず、慧が私に話しかける。

私よりも幾分小柄なその女性は、可愛らしいシフォン素材のベビーピンクのワンピースを着ていた。

五分袖からみえる腕はとても細く白い。

ダークチョコレート色の柔らかそうな肩までの髪を毛先だけクルリと綺麗に巻いて、淡いピンクのグロスを塗った唇を少しだけ尖らせながら、その女性は私を見つめる。

少し吊目がちな瞳が無遠慮なほど真っ直ぐに私を見据えている。

その瞳からは何の感情も読み取ることができない。



面識がない筈……と私が記憶の糸を探っていると。


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