彼と私の優先順位
「……とりあえず家具が置いてある店に行こうかと思うけど……それでいい?」

行き先を尋ねる慧の言葉にハッとして、私は口を開く。

「あ、ねぇ、慧。
その先の新しくできたショッピングモールに行かない?」

「ショッピングモール?」

「うん、昨日会った同期の巴ちゃんが教えてくれたんだけど……お薦めのインテリアショップが入っているんだって。
巴ちゃんも引っ越しの時に、そのお店で遮光カーテンを買ったんだって。
種類も多くて値段も手頃だったって教えてくれたの」



一気に話す私に。

信号待ちをしていた慧は。

チラリと私に、視線を注いで。

「……へえ、聞いてくれたんだ?
ありがとう」

私の頬を左手の甲で優しく撫でた。

慧の骨ばった指が微かに頬をかする。

「う、うん……」

「じゃあ、そこに行こう」



そう。

昨夜。

無事に帰宅したことを巴ちゃんと千恵ちゃんに連絡して。

お礼と心配をかけてしまった謝罪を伝えた。

明日、慧と出掛けることを話して。

色々なお店に詳しい二人にインテリアショップについて教えてもらったのだ。



慧と私の関係については週明けにバッチリ聞くからね、と二人に念押しされてしまったけれど。

巴ちゃんが教えてくれたショッピングモールはとても広大で幾つもの建物、店舗が連なっている。

私は衣類を扱っている店舗が多く入る建物に足を運ぶことが多く、そのインテリアショップのことは知らなかった。
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