彼と私の優先順位
あの頃の私は離れることしか選べなかった。

幼かったせいもあるけれど。



嫌われたくなくて。

慧の重荷に、疎まれる存在になりたくなかった。

それでも、いつか。

亜衣と奏くんのようにお互いを尊重しあえるような関係になりたかった筈なのに。



器の小さい私が抱えるには。

大きすぎた慧への『好き』は。

小さな不安を勝手にどんどん育てて。

猜疑心や嫉妬心、言いようのない寂しさをもたらした。



どこまでが慧に言っていいことか、どこまでが彼女として主張できることなのか、その境界線がわからなくなり。

最終的にはあんなに楽しかった慧との時間を孤独にさせた。



ただ毎日会いたくて、声が聞きたくて。

傍にいるだけで心が浮き足立っていた私の毎日は。

急速に色を失っていった。



気が付けば孤独感しか残ってなかった。

自分を優先してもらえない寂しさ、嫉妬にも似た孤独感と猜疑心に疲れてしまった私は。

自分から白旗をあげてしまった。



それでも。

それでも。

しつこく、慧への想いは捨てきれずに。

慧以上に想える人には出会えずに。

美化されていく思い出と共に。

いつも。

無意識に誰かを慧と比べてしまう自分がいて。

その度に。

慧の存在の大きさを思い知らされた。

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