彼と私の優先順位
「ええ、ちょっと待って。
何か目まぐるし過ぎてついていけないわ……何で二ヶ月なのよ?
そもそも何で期限つき?
結奈は館本さんが好きなんだよね?」

「千恵ちゃん、そこは今、置いといて。
それよりも……真理ちゃんのことでしょ。
結奈ちゃんの顔色が悪い原因は、真理ちゃんね?」



指と同じベージュのグラデーションでメイクアップされた綺麗な目を心配そうに細める巴ちゃん。



「そう言われてみたら真理ちゃん、言い寄ってくる男子はたくさんいたのに、大学時代、決まった彼氏はいなかったのよ。
かといって、遊び歩いていたわけでもなかったし。
館本さんを好きだったのからなのね……附に落ちたわ」

「じゃあ溝口さんは大学時代、館本さんと付き合っていたの?」

「それはないと思うわ。
もし、それだけ好きな人と付き合っていたら真理ちゃんの性格からして、私や色々な人に嬉々として話していただろうから。
真理ちゃんに彼氏ができたとは今まで聞いていないもの」

「じゃあ、結奈への宣戦布告?」

「まあ、そう考えるのが妥当ね。
真理ちゃんからしたら、ずっと好きだった人が彼女と別れてフリーで。
彼女になるチャンスを虎視眈々と狙っていたのに、横からかっさらわれたわけだし。
でも……意外。
ほぼ初対面同然の結奈にそんな風に言ってくるなんて。
前から結奈を知っていたならまだしも……」

「いや、かっさらわれたっていっても。
それは仕方ないんじゃないの?
館本さんが真理ちゃんの気持ちを知っていたのならともかく」



千恵ちゃんの言葉にハッと私は息を呑んだ。
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