彼と私の優先順位
「……慧は知っていたのかな……」



ポツリと呟く私に。



「それは館本さんに聞かなきゃわからないね」

サラダを口にしながら千恵ちゃんが言う。



私のチキン南蛮はほぼ手付かずだ。

慧のことで胸がいっぱいで、食欲がわかない。



「でも、館本さんが知っていたとしても、館本さんは結奈ちゃんをずっと好きだったんでしょ?
二ヶ月って期限付きでも、付き合いたいくらい」

「……それは私に自分と同じ思いをしてほしかっただけかも……」

「真理ちゃんが勝手に言ってるだけでしょ。
館本さんは真剣に結奈ちゃんが好きなんじゃないかな?
あんなにモテる人だよ?
仕事もできるし、何よりあの容姿で。
支店が違う私の耳に入るくらい。
そんな人が彼女ですって、見ず知らずの私達に公言したんだよ?
会社の人間にバレても構わないってことでしょ?
同期会の日、すごく結奈ちゃんを心配していたよね?
好きでもない相手にあそこまで普通はできないよ」

「だよねえ、私もそう思う。
巴ちゃんの後輩を悪く言いたくはないけれど……単なる嫉妬じゃないの?
今朝私、預金係の後輩に聞いたんだけど。
館本さんに彼女がいるみたいって」

「えっ、もう噂になってるの?」

驚く巴ちゃんに、千恵ちゃんは首を横に振る。

「結奈のことがバレたのかって焦ったら全然違ったの。
同じ不動産部の女子、って噂になってるんだって」

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