彼と私の優先順位
「……なるほど。
着々と外堀埋めてるわけね。
話、変わるけれど……柘植がごめんって言ってたよ。
今日結奈ちゃんに会うって話したら、謝罪を伝えてほしいって。
あの日、私と千恵ちゃんでお開きになった後、柘植をガッツリ叱ったのよ。
二人きりのチャンスだって焦りすぎて恐がらせてしまったって。
そんなつもりはなかったって。
本当に申し訳ないって言ってたよ」

「……そうなんだ。
ううん、私の方こそ、ちゃんと話を聞かなかったし……」

「結奈は優しいね、相変わらず。
そこが結奈のいいところなんだけど。
場合によっては、ハッキリと言ったほうがいいんだよ」

「……え?」

「ハッキリと拒絶してほしい時もあるってこと。
前に進むために。
相手の気持ちを考えて、傷つけないように優しく話すことも必要だけど、本心をぶつけてほしい時もあるの。
本心を伝えてもらえなかったら、相手が悲しいのか怒っているのかわからないじゃない?
傷付けないようにした筈が、相手を傷付けていることだってあるの。
大切な相手なら尚更」



千恵ちゃんの言葉が私の胸にストン、と落ちる。

傷付けたくない、失いたくないと私は常に思っていた。

何事についても。

……慧のことも。



私は間違えていたのかな。



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