彼と私の優先順位
「高校生の時……東京に引っ越す幼なじみがいるって言ってたよね?
思い出に……付き合ってほしいって言われたって……。
まさか、その女の子が溝口さんなの……?」

「……そうだよ」



私から少し視線を逸らして、言いにくそうに答える慧に。

全ての合点がいった。



単純に。

好きな人を傷付けた元彼女と、もう一度付き合うことになったことが許せないのだと思っていた。



それだけではなくて。

私が慧と出会う、ずっとずっと前から。

溝口さんは慧を想っていた。

……溝口さんが何度慧に想いを伝えてきたのかわからない。




引っ越すことになり、思い出に、付き合ってほしいといったことも。

一度は受け入れてもらえたのに、結局私が原因で撤回されて。

その私と別れた筈がまた付き合うことになって。



溝口さんにとって、私はとても中途半端で。

自分の好きな人を振り回す、嫌な女なのだろうと思う。



そう。

だから溝口さんは。

私にあんなにも敵対心をぶつけてきたんだ。

でもそれは。

それだけ溝口さんが慧を好きだということだ。

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