彼と私の優先順位
凛とした真っ直ぐな瞳で私を見る亜衣は。

私よりもずっと大人の女性に見えた。



「私、慧がどう思うかばっかりいつも考えていた。
慧にこう思われたらどうしよう、嫌われたら、とか。
自分より慧のことばっかりを考えていた。
だけど……中途半端に自我を捨てれなくて……私、こんなに想っているのに考えているのにって……」



きちんと慧を見ていなかった。

結局私は、私を信じてくれていた慧の気持ちを信じていなかったんだ。



慧と別れて。

気持ちは平穏になったと思っていた。

だけど心はずっと慧を求めて、泣いていた。


でも。

自分が切り出した別れだから。

今更、もう一度付き合いたいなんて。

そんな虫のイイコトは言える筈もなく。

自分の気持ちに蓋をして、鍵をかけた。



慧に再会して。

真っ直ぐに『好き』を伝えてくれて。

泣きたいくらいに、信じられないくらいに嬉しかったのに。



同じことを繰り返したらどうしようって不安で。

傷つくことが怖くて。

私はまたあの時と同じことをしていた。

そう、私が。

何も変わっていなかったんだ。



慧に変化を望んでおきながら。

本当は私が、私から変わらなければいけなかったのに。

わかってもらえない、そんな風に殻に閉じ籠って被害者になっていた。
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