彼と私の優先順位
「……何で……?」

ポロリと言葉が落ちる。



急速に冷えていった頭の中。

さっきまでの熱が嘘みたいに頬は冷めきって。

私はガタン、と席から立ち上がった。



「……ごめん、慧とは付き合えない」

それだけ言って、私は学食を飛び出した。

全力で走って、走って、中庭に辿り着いた私は空いているベンチにノロノロと腰かけた。

ベンチは太陽の光で熱いくらいだった。

だけど、今の私にはその熱さが伝わらなくて。

ふりそそぐ日差しはとても厳しいのに。

心も指先も冷えきっていた。



「……意味がわからない……」

口から言葉が零れて、鼻の奥がツンとした。

喉がヒリヒリ痛くて、私は口を手で覆って泣き出した。

悔しいのか、悲しいのかわからない。

ただ、あんなに軽く言われたことが辛くて。

胸が痛かった。



……ずっと、慧に惹かれていた。

慧ももしかしたら、少しは私を想ってくれているって思っていた。

ううん、期待していた。



だけど、違って。

重さが全然違って。



詳しい事情も、幼なじみの女の子との付き合いの深さも、私にはわからないけれど。

どうしようもなかったのかもしれないし、それが慧の優しさだったのかもしれないけれど。



私ならそんなことはできない。

大好きな大好きな人がいて。

その人を差し置いて、たとえ期間限定でも付き合うなんて、私にはできない。

そもそも、大好きな人に誤解されることが辛い。

そんなに器用に気持ちを切り替えることはできない。

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