彼と私の優先順位
出社してすぐにわかったことは。

今日は社内早帰りの日だということ。

定時退社をしよう、残業を減らそうという試みで、月に一度行われている制度だ。



ロッカーに鞄を入れる時、今朝家を出る前に送ったメールをもう一度確認した。



『おはよう。
慧に最後に話したいことがあります。
今日七時に卒業後に行った遊園地の前で待っています。
来てくれるまで待っています』




返事が来るか来ないかはわからないし。

慧の予定も知らない。

一方的だけれど。

なけなしの勇気を振り絞ったメール。



すぐに涙が零れそうになる自分の心を叱咤して。

ロッカーの鏡の前で、無理矢理笑顔を作る。



泣くのは慧と話してからにしよう。

全てが終わってからにしよう。

亜衣にきちんと報告をして。

巴ちゃんや千恵ちゃんにも話して。

それから思いっきり泣こう。



そう心に決めて、ロッカーの扉を閉めた。

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