彼と私の優先順位
私の気持ちがどんなに後ろ向きで辛くても、お天気は全く関係なく。

ビルの外では、明るい太陽が周囲をジリジリと照らしている。

街にはいつも通りの喧騒が広がっている。



営業フロアに入り、自席に着いた時。

笠井さんに声をかけられた。



「おはよう、紬木さん。
今日、残高検査にあたってるから、融資係に聞いてきてくれる?」

そう言って笠井さんは私に一枚の紙を手渡した。



残高検査は色々な種類があるけれど。

簡単に言うと自店で保管、管理している契約書等の重要書類の数を確認する検査だ。

帳簿に記載されている数字と現実に保管、管理をしている実物の書類等の数が合っているかを数えて、確認する。



同じ係同士で行わず、他の係が行うのが特徴だ。

私は渉外係の所属になっているため、今回は融資係の検査にあたった。

前もって検査日程は知らされない。

検査にあたる人もランダムに選ばれる。



今朝のように出勤していきなり言われることが常だ。

一日の業務で、すぐに使用するものは早朝検査となり、出勤してすぐの朝一番に、印鑑を持参して検査にあたる。

早朝検査にあたると、自分の予定が狂ってしまううえに、早く行わないと他の係に迷惑がかかってしまうので焦ってしまう。
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