彼と私の優先順位
憤慨した様子で亜衣が軽く慧を睨む。

「結奈はお弁当食べずにそのまま飛び出しちゃうし。
慧はパンを放ったらかしだし。
周囲の視線は痛いし、大変だったんだから。
……結奈、お腹空いたんじゃない?
お弁当、食べる?」

心配そうに私を見る亜衣に私は頷く。

「うん……ありがとう、亜衣。
ごめんね……」

「あ、じゃあ、俺もここで食べる」

「何言ってんの!
慧は今日、日直でしょ?
さっき、浅葉先生が探してたよ。
先に行ってきなさい」

「えっ、マジで?」



亜衣に冷たくあしらわれて、慧はブツブツ言いながら、絡ませた指をほどく。

「……帰ったら電話する」

私を優しく見つめて、ポン、と私の頭に手をのせて慧は職員室に向かった。



「……誤解はとけた?」

奏くんが優しく私に問う。

笑顔で頷くと、二人は安堵した表情を見せた。

「良かったよ……本当に。
結奈が慧を好きなのはバレバレだったし、ね?」

奏くんを見つめながら、亜衣は嬉しそうに微笑んだ。

「……まあ、俺から見たら慧もだけどね。
からかってばかりじゃなく、いつハッキリするつもりなんだろうって思ってたけど」

奏くんは肩をすくめて付け加えた。


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