彼と私の優先順位
友達が多いこと、多趣味なことはきっといいことで。

慧には私より大切なものが、優先順位の高いものがいっぱいある、そう思い直した。

『彼女』と『友達』の付き合いは別だっていうじゃない?

浮気をされているわけでもないし。

私の独占欲が強過ぎるのかと考えたこともある。



だけど。

どうしても。

……私の優先順位は全てにおいて低いなと思ってしまう。

慧は、私が慧を想うくらい、私が好きじゃないのかな?

私の『好き』が大きすぎる?

幾つかの用事よりも私と過ごしたいって思わないのかな……。

私のことが好き?

そう尋ねたら。

きっと慧は笑顔で頷くだろう。




亜衣と奏くんはきちんと予定をいつも話し合っていて。

約束もお互いに守りあっている。

そんな姿を身近で見ていると。

正直、とても羨ましくなる。



一緒にいても、電話で呼び出されたら行ってしまうことが多々ある慧。

そのことについて話したこともあった。

前もって言ってほしい、いきなりいなくならないでほしい、と。

私にも予定があるんだよ、と。



喧嘩はしたくないし、できるだけ穏やかに話したつもりだったけれど。

慧は終始不機嫌だった。

結奈だって亜衣や他の友達と遊ぶだろ、と反論されてしまって。

付き合っていたら、その相手を常に優先して、他のことをすることはダメなのかと問われて。

慧はいつも私に優しいし、あまり怒ることもないから。



……嫌われたくない気持ちが根底にある私は、泣きそうになってしまって。

結局言い返せずにいた。

……ひとつひとつはとても些細で。

小さな小さな刺みたいで。

だけど、その小さなものが私の中に少しずつ溜まっていた。
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