彼と私の優先順位
同じような出来事に遭遇してしまうと。

普段仕舞いこんでいる、気持ちの蓋がパカッと開いてしまう。



慧は、今、私のことをどう思っているのだろう。

……きっと何とも思っていないんだろう。

また約束しなおせばいいと思っている筈。

その約束も反古にされる可能性は高いけれど。




慧が私を想ってくれる気持ちは私と同じくらいの想いなのかな。

私と一緒にいたいって、同じ時間を過ごしたいって同じくらい感じてくれているのかな。

約束を破られる度、ドタキャンされる度にそんな気持ちに捕らわれる。



私のなかで。

優先順位、一位は慧なのに。

……慧にとっての私はそうじゃない。

一位じゃない。



私のことをどう思うか聞いてみても、慧は綺麗な笑顔で、大好きだよ、と言ってくれることすら予想できるのに。

慧の本心だけがいつもわからなくて。

見えない線があるような気がして。

一緒にいても、急にまた帰っちゃったりしないのかな、と常に不安になる。

考え過ぎて疲れてしまうくらいに。



そのことを口にできない私は。

本当に意気地がなくて。



だけど。

私はこの恋を大切に守っていく自信を、もう失っている自分がいることに薄々気付き始めていた。


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