彼と私の優先順位
「……結奈?」

観覧車に乗り込む少し前から黙りこんでしまった私を、怪訝に思ったのか、真向かいに座る慧が私の手を軽く握る。



「……慧、話したいことがあるの」

できるだけ真っ直ぐに慧から目を逸らさずに私は慧に言う。

「うん、何?」

いつもと変わらない、私の大好きな微笑みを浮かべて慧が返事をする。




「私達……終わりにしよう」

慧からゆっくり離した手が震えそうになる。

「は……?」

意味がわからない、といった風に慧がアーモンド型の綺麗な瞳を見開く。




「別れよう、慧」

ハッキリと言葉を押し出す。




「何……言って……。
冗談だろ?」

眉間にシワを寄せて私を見つめる慧に、私はゆっくりと首を横に振る。

「……本気なの。
冗談でこんなこと……言わない。
ずっと考えていたの」

「何だよ、それ!
何でいきなり、そんな話になるんだよ?
訳わかんねぇよ!
俺は認めない!」

車高が低いせいで立ち上がれないけれど、慧は本気で怒り出した。

綺麗な顔立ちの慧が怒ると、本当に迫力があって恐い。

慧は普段、私に感情を激しくぶつけたりしないので、余計に。

怒りの色を瞳にたたえて、慧が私を睨む。

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