彼と私の優先順位
その事がきっかけで私達は少しずつ話すようになった。

外見から抱くイメージとは裏腹に、慧は明るく気さくで、とても親しみやすかった。

一学期が終わる頃には、奏くんと亜衣が付き合い初めて私達は益々よく話すようになった。



亜衣、桝田亜衣は小柄で、仔犬みたいな丸い大きな瞳の持ち主だ。

亜衣は一見、可愛らしい雰囲気だけれど、二人の弟達がいるせいか、とてもしっかりしている。

そんな亜衣が入学してすぐ、奏くんに一目惚れをした。

どうしよう、どうしようといつもとはうって変わった雰囲気の亜衣を私は眩しく見つめていた。

必死の思いで告白して、奏くんに気持ちを受け入れてもらえた時の亜衣の幸せそうな泣き顔はとても可愛かった。




「ね、慧と結奈は付き合わないの?」

二学期の始業式の帰り道。

まだまだ夏本番のように、太陽が元気に私達を照らす。

少し歩いただけでも、汗が額に浮き上がる。

夏服のブラウスから覗く腕を太陽の光がジリジリと容赦なく焦がす。



亜衣が無邪気に話し出した。

ダンス部に所属している亜衣の部活が休みの日、お互いに特に用事がない日、私達四人は一緒に帰っている。



「いや、亜衣。
それは結奈と慧が決めることだからさ」

苦笑混じりに奏くんが亜衣の手を引っ張ってたしなめる。

亜衣に私は慧に抱く仄かな気持ちを伝えてはいない。

でも勘のいい亜衣は薄々私の気持ちに気付いているのかもしれない。



「どうする、結奈?」



ゆったりと余裕の笑みを浮かべて、慧が斜め上から私をジッと見つめる。

「……え?」

ポカンとする私に。

慧はジリジリと距離をつめて、私の手をとる。

慧の指がゆるく私の指に絡まる。

突然ジワリと伝わる体温。



「付き合う?」

「……へ?」
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