彼と私の優先順位
「……ううん、何もしていないよ。
ただ……私がもう、ついていけなくなったの。
……慧が大好きで。
慧に好きだって言ってもらえて、彼女になれて、毎日一緒にいられて嬉しかった。
だけど……」

ギュッと両手をきつく握りしめる。

「私にとっての好き、の形が、慧の好きの形と違っているって思ったの。
私にとってね、優先順位は慧がいつでも一位なんだよ……でも慧は違うよね?」

「そんなわけない……!」

反論する慧の瞳を、私は悲しい気持ちで見つめる。



「……違うんだよ、慧。
私はいつも一緒にいたかった。
確かに毎日ずっと一緒になんて、結婚しているわけでも家族でもないし、無理なことはわかってる。
だからこそ、会える日はきちんと会いたかったの、二人で。
……慧が急に私との約束の日に、友達との約束で帰ってしまったり、キャンセルされてしまうことが辛かった。
きちんと用事や約束を、話してくれないことも。
……話す必要性をわかってくれないことも。
最初はそんなことって思ってたの、でも段々それが苦しくなってきたの。
慧と約束する度に、失望する自分が目に浮かぶようになった」



慧がハッとした表情を浮かべる。

そう、全ては些細なことで。

ひとつひとつはとても小さなこと。

客観的に見たらただのスレ違い。

だけど、そのひとつひとつが消化できずに、ずっと私の心の底に溜まっていた。


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