彼と私の優先順位

「……連絡先、知っているんでしょ？
そんなに引きずるくらいなら、一度話してみたら？
そうしたら、結奈の気持ちもふっ切れるんじゃない？」

「……知っているって言っても高校の時のだし……。
ふっ切るも何も別れてるし……」

言い淀む私に。

「でもずっと気になっているんでしょ？
……別れてから一度も会っていない、話してない、その状況を変えてみたら？
それか、同期会だけでも参加してみたら？
来月もあるし。
私も参加するから、ちょっとだけでも環境変えてみたら？」

心配そうに言い募る千恵ちゃんに。



「……両方、考えてみるよ」

小さく返事をする。

「本当に考えなよ？
じゃ、伝票処理をしておくね。
二階に戻る？
戻るなら佐藤さんが帰社してるか、内線してほしいんだけど」

「ごめん。
私、今から不動産部におつかいなの」

「不動産部……やだ、不動産部！？」

心配顔から、瞬時に明るい表情に変わった千恵ちゃん。

パアアッと頬に赤みがさす。




「不動産部って、最近すごくカッコいい人が転勤してきたっていう、あの不動産部？」

「え、そうなの？」

「もう、結奈！
何で知らないのよ！
預金係の女子は皆、噂してるんだからっ。
ねっ、ちょっとどのくらいイケメンか見てきてよ！」

「見てきてよ、って見学に行くわけじゃないし。
そもそも、何でそんなこと噂になっているのよ」

「イケメン情報は何処からともなく噂になるの！
結奈は知らなさすぎ。
とにかくカッコいい人で私達と同い年ってことまではわかってるんだけど、名前とか詳細がわからないの。
そうだ！
不動産部に行ってその人と恋に落ちるかもよ？
ほら、行ってらっしゃい！」