彼と私の優先順位
「聞いてたって……何で……」

「……会いに行きたかったから」

「……え……?」




ストレートに言われて、私の心臓がドキン、ドキン、と速いリズムを刻み出す。

どういう意味?

期待しそうになる身勝手な心を押し止める。

友達として、懐かしいからって意味だよね?

別れた彼女として、じゃない。



だって。



……私だって会いたかったでしょ?

いつか……長い時間が過ぎたら、慧と話したいって思っていたでしょ?

慧が何かを話す前に、私は期待を打ち消す。



「……や、やだな。
連絡先は変えていなかったし……わ、別れたとしても慧は友達だし、避けていたわけじゃなかったんだから、何かあったなら連絡してくれたら……」

できるだけ不自然にならないように、慌てて会話を続ける。



そして、そのことをすぐに後悔した。

私を見つめる慧の瞳がとても真剣で切ない色をしていたから。



「……結奈は友達じゃないから」

呟くように。

「友達とは思えないから」

キッパリ宣言する。
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