彼と私の優先順位
マンションのエントランスから小さくなっていく二人を見送って。
ふと見上げた空には綺麗な三日月が輝いていた。
夜が更けた時間ですら変わらない、むし暑さを肌で感じながら、部屋に戻ろうと踵を返した時。
ポケットのスマートフォンが鳴り響いた。
亜衣が何か忘れ物をしたのかと、着信相手を確認せずに通話ボタンを押した。
「どうしたの?
忘れ物?」
「……誰かと会ってた?」
耳にザラリと響く低い声。
ドクン、と心臓が大きな音を立てて跳ねる。
亜衣ではなくて。
「……慧?」
「……そう。
まさか彼氏?」
どこか不機嫌な声が耳に届く。
「ち、違うよ!
さっきまで亜衣と会っていたの!」
何故か焦って否定する私。
「……外、だよな?
こんな時間まで?
結奈、まさか一人なのか、今?」
今度は逆に焦ったような慧の声。
「え……?
あ、うん。
外って言えば外だけど……」
マンションの入り口、と言う前に慧の言葉がかぶさる。
「迎えに行く。
今、何処?」
「へっ?
何で?」
「何でって、こんな時間に一人なんて危ないだろ!
結奈、女なんだから。
亜衣は?」
「奏くんが迎えに来てくれて……」
ふと見上げた空には綺麗な三日月が輝いていた。
夜が更けた時間ですら変わらない、むし暑さを肌で感じながら、部屋に戻ろうと踵を返した時。
ポケットのスマートフォンが鳴り響いた。
亜衣が何か忘れ物をしたのかと、着信相手を確認せずに通話ボタンを押した。
「どうしたの?
忘れ物?」
「……誰かと会ってた?」
耳にザラリと響く低い声。
ドクン、と心臓が大きな音を立てて跳ねる。
亜衣ではなくて。
「……慧?」
「……そう。
まさか彼氏?」
どこか不機嫌な声が耳に届く。
「ち、違うよ!
さっきまで亜衣と会っていたの!」
何故か焦って否定する私。
「……外、だよな?
こんな時間まで?
結奈、まさか一人なのか、今?」
今度は逆に焦ったような慧の声。
「え……?
あ、うん。
外って言えば外だけど……」
マンションの入り口、と言う前に慧の言葉がかぶさる。
「迎えに行く。
今、何処?」
「へっ?
何で?」
「何でって、こんな時間に一人なんて危ないだろ!
結奈、女なんだから。
亜衣は?」
「奏くんが迎えに来てくれて……」