彼と私の優先順位
いつからだろう?

慧に惹かれ始めたのは。

人目をひく容姿は、言うまでもなく。

でも、それだけではなくて。



私が困っている時を察しているかのように、スッと差し出される温かな手や。

ふとした瞬間の、幼さが見える笑顔と。

授業を受けている真面目な表情。

少し低めの、優しく響く声。

女子顔負けの細やかな心遣い。

短く切り揃えられている爪、長い指も。



慧を形成している全てが気になって。

その全てに私の目も心も惹き付けられて。

小さな好き、のカケラが集まって。

気が付いた時には大好き、になっていた。


だけど。


慧はいつも私に本心を見せない。

大事な部分をいつも煙にまく。

上手に上手に線引きされている気がする。

それは私だけではなく、誰にでも。

自分に好意を寄せている女子には、特に。




私は特別でも何でもない。

親友の彼女の親友。

隣の席のからかいがいのある女子。



だからいつも、どうすればいいかわからない。

どう反応することが正しいのかわからない。

そんなアタフタした私を見て慧がどう思っているのかも。



だから。

特別だよ、大事だよ、と言われる度にいつも、胸が小さくキリッと痛む。

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