彼と私の優先順位
「はあ?
何で奏、亜衣だけ送ってるんだよ……!」

チッと苛立ったような声が聞こえて、私は慌てて否定する。

「ち、違うよ、慧!
私の部屋で亜衣と会っていたの、私は今、二人を見送ってマンションの入り口にいるだけ!」

「……何だ、そっか……マンション?
え……?
結奈、もしかしてひとり暮ししてるのか?」



私がひとり暮しをしていることを知らなかった慧に驚きながら、私は返事をした。

「あ、うん……知らなかったの?」

「知らなかったよ、奏に聞いていないし。
結奈のことを根掘り葉掘り聞き出す、みたいなことはしたくなかったから。
……知りたくてたまらなかったけど。
亜衣にも睨まれるからさ」

慧の拗ねたような声に混じる甘い雰囲気に、私は頬が再び火照っていくのを感じる。

「け、慧は、実家?
というか……どうして電話……?」

「いや、俺もひとり暮し。
電話は、結奈の声が聞きたかったし……今日のことが気になってさ」

ドクン、ドクン……鼓動が大きく聞こえる。

慧に再会したばかりなのに、まるで会っていなかった時間が嘘のように近付く距離感に私の心はついていけなくて。

慧の甘い声が、言葉が私を翻弄する。

……大事にされ過ぎている気になる。

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