彼と私の優先順位
昨晩から一人ああでもない、こうでもないと服を迷って。

鞄を迷って。

靴も髪型も迷って。

何を選んでも落ち着かない。

既に勤務先で再会しているにも関わらず。



迷い疲れて眠りについたけれど、妙な緊張でなかなか眠りはおとずれなかった。

浅い眠りを繰り返して。

とうとう眠ることを諦めて、起き出した私は慧との約束の時間の随分前に身支度を終えてしまっていた。

初デートでもないし、別れた彼氏と食事をするだけなのに。

どうしてこんなに緊張するんだろう。




慧が何を話してくれるのか、何を言われるのかよくわからないけれど、離れていた日のことかと無理矢理予想する。



あの日から。

元彼氏と元彼女というより、付き合っていた頃の慧との距離感のようで。

慧に何を話せば、どんな態度で接すればいいのか考えてしまう。

自分の気持ちを今、慧に聞かれてもきっと答えられない。



火照る頬も速い鼓動も緊張しているだけ。

慧の笑顔に、キュウッと締めつけられる胸も。

不意に泣き出したくなることも過去の切なさのせい。

……今は、そう自分に言い聞かせる。
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