彼と私の優先順位
メニューから視線をはずして慧が私に尋ねる。

歩いている間も、店内に入ってからも周囲からの視線を慧は一身に集めている。

特に女性の視線を。



……そりゃそうだよね。

こんなに整った容姿の人はなかなかいないもの。

数年前も。

ずっとそう思っていた。

そんな人が私の彼氏だなんて、と誇らしい気持ちと不安がいつも、ない交ぜになっていた。



「結奈?」

窓から差し込む光が慧の身体の輪郭を淡く照らす。

頬杖をついて、私を見つめる完璧な姿に溜め息が洩れそうになる。


「あっ、うん。
えっと……」

見惚れていたことを悟られたくなくて、私は慌ててメニューに目を落とす。

……ハンバーグも食べたいけど、エビフライも……。

洋食ランチをじいっと見つめる私に慧はプッと笑って。

「俺がエビフライにするから、結奈はハンバーグにしたら?
半分こ、な」

「うんっ」

思わず笑顔になった私に。

安心したように慧が微笑んだ。

「……よかった、やっと笑った。
結奈、何か緊張してるみたいだったからさ」

「え……」

慧は無言でもう一度私を見つめて、店員さんに注文をした。

「話したいことはたくさんあるけど、まずは腹ごしらえ、しよう?」

優しく言う慧に私は小さく頷いた。
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