彼と私の優先順位
「……本当に好きなんだ」

ゆっくりと言葉を噛みしめるように言われて。

私はギュッと太股の上に置いた手を握りしめる。

速くなる鼓動。

コーヒーの苦味が、口の中に今更ながらじんわりと広がる。

何も言えずにいる私に、慧は困ったように微笑む。



「ごめん……な。
再会して早々……でもどうしても伝えたかったんだ。
本気でもう一度やり直したいんだ、結奈と。
……結奈、今、彼氏は?」

言葉を選ぶようにしながら、慧は話す。

俯きがちに首を横に振る私に、慧はさらに尋ねた。



「好きな人は?」

聞かれて反射的に慧を見てしまう。

勘のいい慧は私の視線に気付いたのか、気付かなかったのか。



「俺を好きになって」

キッパリと言い切った。

慧の真剣な眼差しと言葉が胸に突き刺さる。



好きになって、なんて言われなくても、きっとずっと……私は慧が好きなんだろうと思う。

別れてから慧を忘れたことはなかったから。

……忘れたくなかったから。



想いが強すぎて。

思い出にするには鮮明すぎて。

再会したくない、したらどうしようと思いながらも、再会を願う自分は何処かにいた。
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