彼と私の優先順位
こんなに恵まれた容姿で。

気遣いもできて。

優しくて。

仕事も順調そうで。



そんな慧が。



ずっと私を想っていてくれたなんて。

それこそ有り難すぎる話なのだけれど。

信じられないことなのだけれど。

私は素直に首を縦に振れずにいた。



慧が私を選んでくれたこと、好きになってくれたことへの。

高校生の時も、なかった自信は。

別れてしまった今、もっとなくしている。



そして何より。

あの時に感じた、慧の周りにある見えないものに対する嫉妬心。

自分の心の狭さや狡さが。

ドロドロした感情が。

私の胸にのしかかる。



ただ好きなだけではいられないと痛感したこと。

一緒にいられるだけで良かった筈なのに。

ただそれだけで幸せだった筈なのに。

どんどん欲深くなっていったこと。

独りよがりも多くなった。

何処となく置いていかれそうな孤独感に負けてしまった私がいたことを。

……まだ克服できずにいるから。



だけどその反面。

慧を前にすると嫌でも感じてしまう。

私がどれだけ慧を好きだったのか。

慧に惹かれているのか。

慧が慧である限り。

私はずっと慧を想ってしまう。


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