彼と私の優先順位
何が、ではなくて。

どこが、なんてわからない。

ハッキリと、ここがこうだから慧が大好き、なんて理由を述べることはできない。



私に向けてくれる明るい笑顔。

私と話す時、少し屈んでくれる姿勢。

長い指と高い体温。

雨が降られても、すぐに乾くサラサラの髪。

綺麗な字を書くところ。

真剣に人の話を聞く時の少し難しい表情。

基本的に物事には拘らないのに、男子にしては珍しくティッシュとタオルをきちんと携帯しているところ。



私が覚えていることは高校生の時の慧の記憶だけれど。

それだけでも好きな部分はキリがないくらいにある。

こんなにあるのかと自分でも呆れるくらいに、私は慧を見ていて、想っていた。



だからこそ。

別れを選んだ。

離れなければ。

私は慧を縛ってしまう気がした。



縛って問い詰めて。

嫌われてしまうと思った。

慧に嫌われる、それだけは避けたかった。

そんな私が今、数年経ったとはいえ。

すぐに変わることができるとは思えない。



今は別れているから。

別れて数年経ったから。

溢れそうな想いは随分押し込められていて。

まだ自分を保っていられる。

だけど、また付き合い出したら。

猜疑心を嫉妬心を止めることができるかわからない。









< 86 / 207 >

この作品をシェア

pagetop