彼と私の優先順位
好きになって、なんて。

そんな無理なことを言わないでほしい。



だって、私は何て返事をしたらいい?

もう情けないくらいにあなたが好きだと素直に伝えればいの?

ずっとずっと好きだと言えばいい?

……そうすることができればどんなに楽だろう。



私の胸の奥底で鳴る確かな警鐘。

今のままでお互いに幸せにはなれない、という警鐘。

それがどうしても私に二の足を踏ませる。



「……結奈」

不安を滲ませた瞳を私に向ける慧はやっぱり素敵で。

抗えなくなりそうになる。

キリキリと胸が痛い。



「慧と……やり直すことはできないよ……」

必死の想いで紡いだ言葉。

慧の綺麗な瞳がハッと見開かれる。



「……どうして?」

シンプルな問いに。

私はグッと返答に詰まって俯く。

「……俺が嫌い……?」

フルフルと力なく首を横に振る。

「……他に好きな人がいる?」

左右に首を振る。

「……だったら……何で?」

「……慧は悪くないの、私の問題なの。
……私達が別れた時のこと……覚えている?」



俯いたまま、私は話す。

慧の瞳を直視することができない、私は弱虫だ。

「勿論」

辛さを滲ませた様な声で慧が返事をする。
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