彼と私の優先順位
「……まあ、明日は同期会ってさらっと慧に話しておけば?」

私の様子を見て苦笑しながら、亜衣が助け船を出した。

「……うん」

「あ、奏!」



ウィンドゥ越しにこちらに向かって歩いてくる落ち着いた雰囲気の男性が見えた。

亜衣と私に気付いてニコリ、と表情を和らげる。

亜衣はさっきまであんなに強気で話していたのに、一気にフワリと優しい笑顔を浮かべる。

そんな亜衣を可愛らしいな、と思いながら、話しかける。



「そろそろ出よっか?
日曜日にごめんね、二人でデートを楽しんで」

くるん、と私に視線を移して亜衣は否定する。

「えっ?
何で、一緒に晩御飯食べようよ」

「いいよ、折角の日曜日だし。
話を聞いてくれてありがとう。
……慧に連絡もしたいし、ね?」

断る姿勢を崩さない私に、亜衣は渋々頷いて。

コーヒーショップの前で私は二人と別れた。



まだまだ外は明るくて。

暑さも健在だった。

コーヒーショップで適温になっていた私の体温も一気に引き上げられて。

早足で歩き出した時、スマートフォンが鳴り響いた。

慧の名前が表示された画面にドキン、と胸が高鳴る。



「……ハイ」

「結奈?」

低くて優しい声に。

先刻の亜衣の話が脳裏に蘇る。

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