あの日から、ずっと……
 仕事の様子も少しずつ分かってくると、直接海外支社からのメールも届くようになり、忙しくなる…… 

 メールを訳し、各部署に確認し返信する……


 しかし、仕事に慣れるに連れ分かった事がある。

 新入社員の私が、雑用をせずに自分の仕事をしている事が気に入らない女子社員達が居る事を……


 そして、現場あがりでない私が、スーツで仕事をしている事も気に入らないらしい……


 しかし、なんとかコピーやお茶くみの雑用に手を出すのだが……


「宇佐美さん、それ他の人に頼んで、こっち先にやって!」

 主任や、ましてや他の課の課長から急かされると、そういう訳にも行かなくなってしまう……





「はあ……」

 私は書類を手に、機材部へ向かいながら、つい、大きなため息が出てしまった。


「何、ため息なんか着いているんだ?」


 その声に、私は恐る恐る振り向いた……


「泰知兄ちゃん!」


 私は思わず声を上げたしまった。


「何かあったのか?」


「うん…… 何をやるべきなのかが分からなくて……」

 泰知がふっと笑った……

「そんなの当たり前だろ…… まだ入社して日が浅いんだから……」


「そうだね……」

 泰知はそう言うが、なんかもっとレベルの低い事で私は悩んでいる気がする……


「まずは、自分に与えられた仕事、一生懸命熟して行くしかないだろ!」

 泰知はそう言うと、私の頭を軽く叩いた。


「うん」


「婆ちゃん達も芽衣に会いたがっているから、家に顔出せよ!」


「うん! 行く!」


 泰知は手を上げ去って行った。


 私は泰知が自分を覚えててくれた事が嬉しくなり、足取り軽く機材部へと向かった。

 廊下を曲がった瞬間誰かとぶつかり書類が床に落ちた……


「すみません…」

 私は頭を下げ書類を拾ったのだが、ぶつかった制服の女性は、キッと私を睨むと何も言わずに行ってしまった。

 髪の毛の長い綺麗な人だ…… 

 多分、受付の人だったような……


 私は、胸の中に嫌な思いが残ったがどうする事も出来ずに、その場を後にした……

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