あの日から、ずっと……
 宇佐美芽衣(うさみめい)七歳。

 長い髪をポニーテールにし、お気に入りの白地に黒の大きな水玉のワンピースを着て、公園へと走った。


「泰知に兄ちゃん!」と大きな声で呼ぶと、顏を上げたのは吉川泰知(きっかわたいち)、芽衣より五歳年上の近所に住む幼なじみだ……


「おお! 芽衣」

ニコリと笑うと、高い鉄棒に腰掛けていた泰知は、ストンっとカッコ良く飛び降りた。

 泰知が鉄棒から飛び降りる姿に、芽衣の胸はキュンと音を立てる。

 なぜ、胸の中で音がするのかは、幼い芽衣にはまだ分からなかった…… 

 芽衣も何度も、高い鉄棒から飛び降りようと思ったが、怖くて出来ず泣き出してしまい、泰知がいつも助けてくれた。



 次々と近所の子供達が集まり、近くの小川へ向かい遊んだ。

 小川の流れは穏やかで、近所の子供達の遊び場としては最適だった。
 熱い日の小川での水遊びは気持ち良く最高に楽しい。

 夕方になると、それぞれに皆家へと帰って行く、芽衣は泰知と並んで帰り道を歩いた。

 ほぼ毎日の事だが、この泰知と二人で過ごす時間を芽衣は楽しみにしていた……


「芽衣。アイス食べようか?」


「ええ! 私、お金持ってないよ」


「いいよ、昨日、婆ちゃんから小遣いもらったから……」

 泰知は駄菓子屋へ入ると、ソーダ―のアイスを二本手に持って出て来た。


 近くの土手に腰掛けると、泰知が芽衣にアイスの棒を差し出した。


「ありがとう!」


「でも、内緒だぞ…… 買い食いすると怒られるから」


「うん」

 芽衣は、泰知との秘密が出来たみたいで嬉しくなり、思いっきり笑顔を見せた。


「そんなに、アイスが嬉しいの?」

 泰知は少し不思議そうな顔をしながら、アイスを舐め始めた……
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