あの日から、ずっと……
 次の日、いつものように公園へ行くと、泰知が待っていた。

 鉄棒から飛び降りる泰知を見ながら、もう、泰知と遊べなくなってしまうと思うと、悲しくて思わず下を向いてしまった。


 それに気付いた泰知が、芽衣に何か言おうとしたが、近所の子供達が公園に入って来てしまい、遊びが始まってしまった。


 いつもの小川へ行くが、芽衣は気持ちが沈んだままだ……


 川の水をかけ合ってはみるものの、すぐに皆と別れる事を考えてしまい、下を向いてしまう。



 いつものように、泰知と小川からの帰り道を並んで歩いた。


 すると、泰知が足を止め、膝に手を当て芽衣の目の高さに合わせるように立っている。


「どうしたの? お腹でも痛い? おんぶしてあげようか?」


 芽衣は大きく首を振ったが、泰知はくるりと向きを変え、背中を差し出した。


「早く、乗りな……」

 芽衣は仕方なく、泰知の肩に手をかけた。
 泰知は軽々と芽衣をおぶって歩き出した。

 小学校一年生の芽衣には、六年生の泰知の背中はとても大きくて、力強く感じた……


 芽衣は堪えていた涙が、ぽたぽたと落ちだしてしまった……

「どうしたの?」

 泰知の優しい声に……


「おっ…… お引越しするの…… うっ……」

 泣きじゃくりながら、芽衣は泰知の背中で言った。


「えっ…… いつ? どこへ……」


「夏休み終わったら…… うっ…… アメリカ……」


「急に、そんなに遠くに……」


 泰知はその後、何も言わなかった……


 芽衣は、泣きじゃくったまま背中におぶわれ、泰知がどんな顔をしているのか解らなかった。


 芽衣の家の前に着くと、泰知は芽衣を下ろすと、何も言わず走り去ってしまった……

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