あの日から、ずっと……
 引っ越しの日が近付くが、台風の影響で大雨が続き、なかなか外で遊ぶ事が出来ない。

 芽衣は覚悟を決め、雨具に手を通すと長靴を履いた。


「芽衣ちゃん。この雨の中、何処に行く?」

 爺ちゃんが、玄関を出ようとした芽衣に驚いて声を上げた。


「泰知兄ちゃんの家……」


「そうか…… しばらく会えんくなるでなあ…… 分かった! 爺ちゃんが送ってやる」


「うん!」

 芽衣は、ダメだと叱られると思っていたので、嬉しくなり明るい声を上げた。


 爺ちゃんと手を繋ぎ、二百メートルほど離れた、泰知兄ちゃんの家へ向かった。

 すると、向こうから、傘羽を差した影が見えた。
 その影はだんだんと近づき、芽衣の目にはっきりとした姿が映った。


「泰知兄ちゃん……」

 泰知は驚いた顔で芽衣に目を向けた……


「今、泰知の家に行こうと思ったんだが…… どこか出かけるのか?」

 爺ちゃんが残念そうに聞いた。


「ううん。芽衣ちゃん呼びに行こうと思って……」


「そうか! ちょうど良かった…… 芽衣を頼む……」


「うん!」


「じゃあ、芽衣ちゃん。後で迎えに行くで、それまで泰知の家を出ちゃいかんよ!」


「うん、わかった! 爺ちゃん、ありがとう!」


 爺ちゃんは手を振って、来た道を戻って行った。


「芽衣。行こう!」

 泰知が芽衣の手を取り歩き出した。

< 5 / 28 >

この作品をシェア

pagetop