あの日から、ずっと……
泰知の家は、昨年新築したばかりの大きな家だ……
田んぼや畑をやりながら、泰知の父は町役場で働いている。
泰知の家へ行くと、泰知の母、泰知の爺ちゃん、婆ちゃんが笑顔で出迎えてくれた。
「芽衣ちゃんいらっしゃい。雨具脱いでごらん、乾かしてあげるで……」
泰知の婆ちゃんが、芽衣の雨具を脱がしてくれた……
キッチンの方から、いい匂がしてくる。
「芽衣ちゃんの好きなクッキー焼いているからね!」
ぽっちゃりとした体系の泰知の母の元気のよい声が響いた。
「わ―。ありあとう!」
芽衣は目を輝かせて喜んだ。
泰知とトランプしたり、人生ゲームしたりと楽しいのだが、やはり会えなくなってしまう事を考えると悲しくなってしまう。
「ちょっと待っていて」
泰知は階段を駆け上がって行った。
しばらく待っていると、泰知は抱えるほどの大きさの包を持って部屋に戻って来た。
「芽衣ちゃんこれ」泰知は包を芽衣に差し出した。
「ええ?」
芽衣は包を受け取り、かかっていたリボンをほどいた。
中から可愛らしい目をした、茶色のクマのぬいぐるみが出てきた。
「わっ――」
芽衣は歓声を上げた。
「小遣いが足りなくて、婆ちゃんが出してくれたんだけどね……」
泰知はちょっとはずかしそうに言った。
芽衣は自分のポシェットから、ピンクの小さな包みを出した。
「これ」
芽衣は泰知に包を差し出した。
中には、父の何処かの海外土産だった、綺麗なガラスの玉のキーホルダーが入っていた。
「ありがとう……」
泰知は、ぎゅっとキーホルダーを握りしめると、今にも泣きそうな芽衣の前に座った。
「大きくなったら、また、ここに帰ってきて…… 僕はここにいるから……」
泰知は優しく、芽衣の頭を撫でた……
「うん」
芽衣は泣きながら肯いた。
絶対に帰ってくると、幼い芽衣は心の中で固く誓った……
外の雨は益々激しくなり、強い風が雨とともに窓にたり、芽衣を少し怖がらせた。
時計の針が、もうすぐ六時を指す。じいちゃんが迎えに来るころだ……
「芽衣ちゃん、今、台風が近づいてるところだでぇ、夕飯を食べて行きな…… もう少しすれば落ちくで……」
泰知の婆ちゃんが、窓の外を伺いながら言った。
「でも……」
芽衣は、どうしていいか解らず下を向いた。
「おばさんが電話してあげるから! 芽衣ちゃん天ぷら好き?」
泰知の母が、キチンから出て来て笑顔を見せた。
「はい!」
芽衣の目は輝いた。
もう少し、泰知と一緒にいられる事が嬉しかった。
大嫌いな台風も、なんだか悪い事で無い気がしてきた。
夕食には、泰知の兄の悟も部活から帰ってきて一緒に、夕食を囲んだ……
悟は、芽衣のご飯の十倍位は入ったどんぶりを抱え、大きな口で次から次へと、口に入れて行く。
芽衣は、悟の食べっぷりに驚いて見入ってしまった。
「ほら、ほら、芽衣ちゃんも食べないと、全部悟に食べられちゃうよ」
泰知の母が笑って、芽衣のお皿にエビの天ぷらを乗せてくれた……
「あっ!」
芽衣は大きな声を上げた?
「どうしたの?」泰知の母が驚き芽衣を見た。
「悟兄ちゃん…… 一口でエビ入れちゃった……」
芽衣が目を丸くして言うと、皆が一斉に笑い出し、悟が咽て大騒ぎになった。
芽衣は楽しくて、引っ越しが決まってから、久々に大きな声で笑った気がした。
その姿を、泰知の家族が優しく、そして寂しそうに見守っていた事を、芽衣は知らなかった。
二時間もすると雨も落ち着き、泰知の家に爺ちゃんが迎えにきた。
芽衣の顔は、元気に明るさを取り戻していた。
芽衣の笑顔に、爺ちゃんが安心したようにほほ笑むと、泰知の家族に目を合わせ頭を下げた。
田んぼや畑をやりながら、泰知の父は町役場で働いている。
泰知の家へ行くと、泰知の母、泰知の爺ちゃん、婆ちゃんが笑顔で出迎えてくれた。
「芽衣ちゃんいらっしゃい。雨具脱いでごらん、乾かしてあげるで……」
泰知の婆ちゃんが、芽衣の雨具を脱がしてくれた……
キッチンの方から、いい匂がしてくる。
「芽衣ちゃんの好きなクッキー焼いているからね!」
ぽっちゃりとした体系の泰知の母の元気のよい声が響いた。
「わ―。ありあとう!」
芽衣は目を輝かせて喜んだ。
泰知とトランプしたり、人生ゲームしたりと楽しいのだが、やはり会えなくなってしまう事を考えると悲しくなってしまう。
「ちょっと待っていて」
泰知は階段を駆け上がって行った。
しばらく待っていると、泰知は抱えるほどの大きさの包を持って部屋に戻って来た。
「芽衣ちゃんこれ」泰知は包を芽衣に差し出した。
「ええ?」
芽衣は包を受け取り、かかっていたリボンをほどいた。
中から可愛らしい目をした、茶色のクマのぬいぐるみが出てきた。
「わっ――」
芽衣は歓声を上げた。
「小遣いが足りなくて、婆ちゃんが出してくれたんだけどね……」
泰知はちょっとはずかしそうに言った。
芽衣は自分のポシェットから、ピンクの小さな包みを出した。
「これ」
芽衣は泰知に包を差し出した。
中には、父の何処かの海外土産だった、綺麗なガラスの玉のキーホルダーが入っていた。
「ありがとう……」
泰知は、ぎゅっとキーホルダーを握りしめると、今にも泣きそうな芽衣の前に座った。
「大きくなったら、また、ここに帰ってきて…… 僕はここにいるから……」
泰知は優しく、芽衣の頭を撫でた……
「うん」
芽衣は泣きながら肯いた。
絶対に帰ってくると、幼い芽衣は心の中で固く誓った……
外の雨は益々激しくなり、強い風が雨とともに窓にたり、芽衣を少し怖がらせた。
時計の針が、もうすぐ六時を指す。じいちゃんが迎えに来るころだ……
「芽衣ちゃん、今、台風が近づいてるところだでぇ、夕飯を食べて行きな…… もう少しすれば落ちくで……」
泰知の婆ちゃんが、窓の外を伺いながら言った。
「でも……」
芽衣は、どうしていいか解らず下を向いた。
「おばさんが電話してあげるから! 芽衣ちゃん天ぷら好き?」
泰知の母が、キチンから出て来て笑顔を見せた。
「はい!」
芽衣の目は輝いた。
もう少し、泰知と一緒にいられる事が嬉しかった。
大嫌いな台風も、なんだか悪い事で無い気がしてきた。
夕食には、泰知の兄の悟も部活から帰ってきて一緒に、夕食を囲んだ……
悟は、芽衣のご飯の十倍位は入ったどんぶりを抱え、大きな口で次から次へと、口に入れて行く。
芽衣は、悟の食べっぷりに驚いて見入ってしまった。
「ほら、ほら、芽衣ちゃんも食べないと、全部悟に食べられちゃうよ」
泰知の母が笑って、芽衣のお皿にエビの天ぷらを乗せてくれた……
「あっ!」
芽衣は大きな声を上げた?
「どうしたの?」泰知の母が驚き芽衣を見た。
「悟兄ちゃん…… 一口でエビ入れちゃった……」
芽衣が目を丸くして言うと、皆が一斉に笑い出し、悟が咽て大騒ぎになった。
芽衣は楽しくて、引っ越しが決まってから、久々に大きな声で笑った気がした。
その姿を、泰知の家族が優しく、そして寂しそうに見守っていた事を、芽衣は知らなかった。
二時間もすると雨も落ち着き、泰知の家に爺ちゃんが迎えにきた。
芽衣の顔は、元気に明るさを取り戻していた。
芽衣の笑顔に、爺ちゃんが安心したようにほほ笑むと、泰知の家族に目を合わせ頭を下げた。