ヒトツバタゴ
ヒーローは遅れて登場する

〜ピンチは背後から突然に〜





あーもう!しつこい!




寒さの残る3月上旬


私、河本さつきは仕事帰りに会社から電車で5駅の自宅の最寄り駅から出ると2人組の男にしつこくナンパをされている


いつもなら無視して素通りで終わりなのに、今日のはやたらとしつこい!


追いかけてきて私の進行方向に回り込み進路を塞がれている



「ねぇいいじゃんちょっとお茶くらい。そんなに美人なんだからそれなりに遊んでんでしょー?」


眉毛の細い金髪の短髪の男が1歩近づく

距離を保つように私は1歩後ずさる


寒いから早く家に帰って温まりたいのにっ!



確かに私は美人だけど、26歳にもなって遊ぶどころか男性経験だって一度もない



理由はハッキリと分かりきっている


鎖骨の根本から鳩尾辺りまで胸骨の上を走る手術跡

幼い頃に心臓が悪く、手術をした時の跡が今でもくっきりと残っている


縦についた傷跡は消えない


当時程のグロテスクさはなくなっても切られた跡は周辺の皮膚をも引き攣らせ自分で見ても顔を顰めてしまう



その跡を誰かに見られ引かれるのが嫌でプールの授業だっていつも見学していた

暑い中、水の中ではしゃぐ同級生達が羨ましくて、いつも体操座りして膝に顔を埋めていた




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