ヒトツバタゴ


「そうです。新入社員の時は熱を出して参加できなかったので」



今年は熱が出なくて残念です。と心の中で付け加える




「毎年、どこの部署も経験者とか運動神経のいい奴出してくるから観てる方も結構面白いよ」




前川さんの言葉にへぇそうなんですねと返しながら、アリーナに目を向ける



確かに私のような運動音痴は1人もいなくて、みんな途切れることなくトスやレシーブの練習を繰り返している






ウォーミングアップの時間が終わり、試合の準備が始まった。営業部1課は2試合目からで橘達はスタンドへと上がってきた



スタンド席の後ろの通路で出場するメンバーと作戦会議をして、当然のように私の隣に座る橘



ふわりと香る橘の匂いに一瞬くらりとしたのを抑え込み目の前のコートで始まろうとしている試合に目を向ける




「あれ?大也がいる」



コートの中に見慣れないバレーボールをする大也の姿を発見した



「大也も海外遠征がなければ毎年出てるよ」



日本でのラグビーのシーズンは夏からだしなと付け加えられた橘の言葉に納得する




「大也がバレーって変な感じね」



思ったままに口にした私の言葉にクスクスと笑う橘




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