ヒトツバタゴ
「でも伊達にスポーツ科学部だっただけあって、粗いけど上手いよ」
橘が言う通り、大也は既にいくつもスパイクを決めている
「早川さんもいるし、ここが一番手強いかなぁ」
早川さんは私達の2歳上で大也の教育係をした先輩でなんでもお見通しですって感じの目が私は苦手
でもその早川さんがゲームをコントロールしているのがバレーボールの知識のない私ですらわかる
「早川さんてセッターの人ですか?」
私の前に座っていた吉倉さんが後ろを振り返る
セッターは確かトスを上げる人よね
「そう。2つ上で大也の教育係した人なんだけど、春高の本戦にも出てたよ」
橘の説明にへぇと感嘆の声を出して再びコートを見つめる吉倉さん
春高と言えばバレーボールをやっている高校生なら誰もが目指す全国大会…橘も目指していたんだろうな
目の前で行われている試合はあっという間に大也のいるマーケティング企画部が1ゲームを先取し2ゲーム目に突入していた
「そろそろ行こうか」と橘が立ち上がり、続けて吉倉さんも立ち上がる
「頑張って」
私の身のために…
吉倉さんが「はい!」と元気よく答える